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内田 俊介*; 塙 悟史; 内藤 正則*; 岡田 英俊*; Lister, D. H.*
Corrosion Engineering, Science and Technology, 52(8), p.587 - 595, 2017/10
被引用回数:4 パーセンタイル:21.16(Materials Science, Multidisciplinary)電気化学に対する静的解析と酸化皮膜成長に対する動的解析を組み合わせたECP評価モデルを開発した。このモデルで得られた主な結論は以下の通り。過酸化水素及び酸素のECPへの影響は、酸化皮膜の性状変化によるものとして説明できた。水化学条件の変更に起因するECPのヒステリシスを評価することができた。ECPに対する中性子照射効果として、酸化皮膜中の照射誘起拡散をモデルに導入することで、中性子照射によるアノード電流密度の低下に起因したECPの低下を予測した。
馬場 祐治; 下山 巖
Photon Factory Activity Report 2016, 2 Pages, 2017/00
土壌中におけるストロンチウム(Sr)の吸着状態を明らかにするため、層状酸化物(雲母)に吸着した非放射性Srの化学結合状態をX線光電子分光法(XPS)およびX線吸収端微細構造法(XANES)により調べた。放射性Sr-90の原子数は極めて少ないので、超微量のSrの測定を行うため、X線の全反射条件下でXPS, XANESを測定した。全反射XPSでは、1cm当たり300ベクレルのSr-90に相当する150ピコグラムまでのSrの測定が可能であった。XPSで測定したSr2p軌道のエネルギーは、吸着量の減少とともに低エネルギー側にシフトした。またXANESスペクトルにおけるSr2p Sr4d共鳴ピークのエネルギーも、吸着量の減少とともに低エネルギー側にシフトした。これらのエネルギーシフトを、点電荷モデルにより解析した結果、Srと雲母表面の化学結合は、極微量になるほどイオン結合性が強くなることを明らかにした。
小宮山 大輔; 天谷 政樹
JAEA-Research 2016-013, 20 Pages, 2016/08
PWRの冷却材喪失事故(LOCA)において、流路の閉塞等により燃料棒の冷却が十分に行われない場合、燃料被覆管表面に冷却材中のホウ酸が析出する可能性が考えられる。通常運転温度域では、実機での実績からホウ酸水はZircaloy-4の酸化挙動に影響を及ぼさないと考えられるが、LOCAを想定した高温域におけるホウ酸とZircaloy-4との反応に係る知見は十分に得られていない。本研究では、固体ホウ酸を載せたZircaloy-4の板材を900Cまでの温度及び複数の雰囲気で酸化させることにより、固体ホウ酸の高温時挙動、ホウ酸とZircaloy-4との反応の有無、及びホウ酸がZircaloy-4の酸化挙動に及ぼす影響を調べた。実験結果から、高温酸化雰囲気においてZircaloy-4表面に固体ホウ酸の脱水により生成する無水ホウ酸が存在すると、この無水ホウ酸がZircaloy-4と雰囲気との接触を断つことでZircaloy-4の酸化を抑制することが示唆された。また、酸化膜付きZircaloy-4の表面に固体ホウ酸が付着し高温まで加熱された場合は、形成している酸化膜の空隙に無水ホウ酸が浸透することでその後の酸化を抑制することがうかがえた。
香西 直文; 三田村 久吉; 福山 裕康; 江坂 文孝; Komarneni, S.*
Microporous and Mesoporous Materials, 89(1-3), p.123 - 131, 2006/03
被引用回数:11 パーセンタイル:39.24(Chemistry, Applied)層状遷移金属水酸化物塩は、陰イオン交換性層状化合物の一種であり、陰イオン吸着材及びインターカレーションホストとして最近注目を集めるようになった。それゆえ、その種類,合成方法,特性などに関する論文数は少ない。本研究では、新型の層状遷移金属水酸化物塩である水酸化酢酸ニッケル銅の基本的な特性について述べる。酢酸ニッケル,酢酸銅,過酸化水素の混合溶液を150Cの水熱条件で4時間加熱することにより、NiCu(OH)(OCOCH) 0.9HOの組成を持つ層状化合物が得られた。この化合物は水溶液中の塩素イオンと硝酸イオンを吸着しないが、2価以上の陰イオンを吸着し、さらに毒性の高いヒ酸イオンと亜セレン酸イオンに対して最も高い吸着選択性を持つ。それらのイオンに対する吸着材としての利用が考えられる。
香西 直文; 三田村 久吉; 福山 裕康; 江坂 文孝; Komarneni, S.*
Journal of Materials Research, 20(11), p.2997 - 3003, 2005/11
層状遷移金属水酸化物塩は、陰イオン交換性層状化合物の一種であり、陰イオン吸着材及びインターカレーションホストとして最近注目を集めるようになった。それゆえ、その種類,合成法,特性などに関する論文数は少ない。本研究では、従来とは異なる方法で合成した層状水酸化酢酸銅の基本的な特性について報告する。酢酸銅溶液を水酸化ナトリウム溶液でpH6.5まで滴定し、引き続き40Cで熟成することによって得られた化合物は、既知の層状水酸化酢酸銅Cu(OH)(OCOCH)HOと組成及び幾つかの特性が類似している。酢酸含有率がわずかに低いこの化合物は、既知の化合物に比べて、結晶形、383K以下での固相への酢酸イオンの結合安定性,溶液中の陰イオンとの反応などが異なる。
高桑 雄二*; 小川 修一*; 石塚 眞治*; 吉越 章隆; 寺岡 有殿
触媒, 47(5), p.352 - 357, 2005/08
Ti(0001)表面酸化反応を高輝度放射光とHe-I共鳴線を用いた光電子分光でリアルタイムモニタリングした。Ti2pとO1s内殻準位,価電子帯の光電子スペクトルから求めた酸素吸着量,酸化状態,酸化膜厚,電子状態,仕事関数の時間発展から解明した酸素吸着モデルと極薄酸化膜形成過程について解説した。
亀尾 裕; 中島 幹雄; 平林 孝圀*
Journal of Nuclear Science and Technology, 41(9), p.919 - 924, 2004/09
被引用回数:13 パーセンタイル:61.44(Nuclear Science & Technology)放射性金属廃棄物に対する新規除染技術として、ケイ酸ナトリウムと酸から調製したゲル除染剤を用いたレーザー除染法について検討した。Coトレーサーを塗布した模擬汚染試料及び動力試験炉(JPDR)の一次冷却系統から切り出した実汚染試料に本除染法を適用したところ、23回の除染で99%以上の放射能(Co)を除去することができた。除染反応におけるレーザー照射の効果を明らかにするため、腐食生成物層中の酸素及び鉄の化学結合状態をX線光電子分光分析装置で調べた。その結果、ゲル除染剤による腐食生成物層の溶解が、レーザー照射を行うことにより大幅に促進されることがわかった。
寺岡 有殿
電気学会技術報告, (970), p.10 - 15, 2004/07
Si(001)表面は酸素分子によって酸化される。温度とガス圧をパラメータとして酸化膜形成,SiO脱離,その共存と反応様式は変化する。本研究によって酸素分子の持つ並進運動エネルギーも表面化学反応に影響を与える重要なパラメータであることが明らかにされてきた。室温における酸素分子の並進運動エネルギー誘起酸化,1000K以上の高温におけるSiO脱離反応に対する並進運動エネルギーの影響,900Kから1000Kの温度領域におけるSiO脱離と酸化膜形成の共存の反応機構について解説した。
福島第二3号機シュラウドサンプル調査実施チーム
JAERI-Tech 2004-044, 92 Pages, 2004/05
本報告は、福島第二原子力発電所3号機炉心シュラウド下部リングH6a溶接部外側から採取したき裂を含む材料サンプル(東京原子力株式会社が平成13年度に実施した調査の際に日本核燃料開発株式会社に保管した試料の一部)について、日本原子力研究所が第三者機関として東海研究所の照射後試験施設(ホットラボ等)において各種の検査・評価を実施し、き裂発生の原因究明に資する知見を取得することにより、調査結果の透明性を確保することを目的として実施した。本調査の結果、以下のことが明らかとなった。(1)き裂は溶接金属から約3~9mm離れた位置に3箇所観察され、最大深さは約8mmであった。(2)2箇所のき裂破面を観察した結果、き裂破面のほぼ全面が粒界割れであったが、き裂開口部には約300m範囲に粒内割れが観察された。(3)表面から約500m深さまで、最高Hv400を超える硬化層が形成されていた。また、溶接金属から約3mmまでの表面層には溶接熱影響による軟化が見られた。(4)き裂の内部には、開口部からき裂の先端までほぼ全体にわたり酸化物が観察され、その酸化物は主として鉄の酸化物であった。(5)合金中に主要元素濃度の揺らぎが見られたが、き裂との間に相関性は認められなかった。本調査の結果と、溶接によりき裂付近に発生していたと考えられる引張残留応力及び炉水の溶存酸素濃度等を考慮すると、き裂は炉心シュラウド下部リング外表面の加工層において主として粒内型の応力腐食割れ(SCC)により発生後、SCCとして結晶粒界を経由して進展したと結論される。
シュラウド・再循環系配管サンプル調査チーム; 中島 甫*; 柴田 勝之; 塚田 隆; 鈴木 雅秀; 木内 清; 加治 芳行; 菊地 正彦; 上野 文義; 中野 純一; et al.
JAERI-Tech 2004-015, 114 Pages, 2004/03
東京電力(株)福島第二原子力発電所2号機においては、原子力安全・保安院の指示によりシュラウド溶接部の目視点検を実施し、炉心シュラウド中間胴/中間部リング溶接線H3外面にひび割れを発見した。本調査は、東京電力(株)が日本核燃料開発(株)にて実施するき裂を含む材料サンプルの調査・評価に関して、原研が第三者機関として調査計画の策定段階から加わり、調査中には随時試験データの評価や試験現場への立会を実施し、最終的に得られた調査データを入手し原研独自の調査報告書を作成することにより、調査の透明性を確保することを目的として実施した。本調査の結果と溶接により発生する引張残留応力及び炉水中の比較的高い溶存酸素濃度を考慮すると、このき裂は応力腐食割れ(SCC)であると考えられる。応力腐食割れの発生原因については、さらに施工法の調査などを行い検討する必要がある。
シュラウド・再循環系配管サンプル調査チーム
JAERI-Tech 2004-012, 62 Pages, 2004/02
東北電力(株)女川原子力発電所1号機(沸騰水型)では、第15回定期検査の際に、炉心シュラウド中間部リングH2及び下部リングの溶接線近傍にき裂が確認された。本調査は、東北電力(株)が日本核燃料開発(株)にて実施するき裂を含む材料サンプルの調査・評価に関して、原研が第三者機関として加わり、最終的な調査データを入手し、原研独自の報告書を作成することにより、調査の透明性を確保することを目的として実施した。本調査により、以下のことが明らかになった。(1)中間部リングの外表面近傍には150250m程度の深さまで硬化層が存在した。(2)き裂の内部には腐食生成物が付着しており、腐食が粒内へ進行した部位も見られた。(3)中間部リング外表面近傍から100m程度の深さの領域では主として粒内割れが観察され、200m程度の深さより内部の領域では、粒界割れが観察された。(4)結晶粒界には、熱鋭敏化材に見られるようなCr濃度の顕著な低下傾向がなかった。(5)中間部リング材料の化学組成は、JIS規格SUS304Lに相当する組成であった。本調査の結果と、溶接によりき裂部付近に発生していたと考えられる引張残留応力及び炉水中の溶存酸素濃度等を考慮すると、き裂は応力腐食割れ(SCC)であると結論される。
シュラウド・再循環系配管サンプル調査チーム
JAERI-Tech 2004-011, 64 Pages, 2004/02
東京電力(株)柏崎刈羽原子力発電所1号機では、第13回定期検査中に、原子力安全・保安院の指示でシュラウド溶接部の目視点検を実施し、原子炉圧力容器内のシュラウド中間部胴溶接部H4にひび割れが確認された。本調査は、東京電力(株)が日本核燃料開発(株)にて実施するき裂を含む材料サンプル調査・評価に関して、原研が第三者機関として調査計画の策定段階から加わり、調査中には随時試験データの評価や試験現場への立会を実施し、最終的に得られた調査データを入手し、原研独自の調査報告書を作成することにより、調査の透明性を確保することを目的として実施した。本調査の結果、溶接残留応力及び炉水中の溶存酸素濃度を考慮すると、き裂は、浅い加工層を有する表面で応力腐食割れ(SCC)により発生した後、SCCとして内部へ分岐しながら結晶粒界を経由して3次元的に成長し、き裂の一部は溶接金属内部へ進展していったと結論される。
シュラウド・再循環系配管サンプル調査チーム
JAERI-Tech 2004-004, 74 Pages, 2004/02
東京電力(株)福島第一原子力発電所4号機(沸騰水型,定格出力78.4万kW)において、第12回定期検査(平成5年9月平成6年2月)の自主点検の際に、炉心シュラウド中間部胴H4溶接部にき裂が発見された。本研究は、東京電力(株)が日本核燃料開発(株)にて実施するき裂を含むSUS304Lの材料サンプルの調査・評価に関して、原研が第三者機関として加わり、最終的に得られた調査データを入手し、原研独自の調査報告書を作成することにより、調査の透明性を確保することを目的として実施した。本研究により、以下の結論が得られた。(1)観察したき裂のほぼ全体が粒界割れであった。き裂内部には腐食生成物が付着し、一部は粒内に成長していた。また、2次き裂の一部は溶接金属に達していた。(2)表面近傍のビッカース硬さは300程度に高くなっていた。また、照射による母材の硬化が認められた。(3)結晶粒界ではCr濃度の低下とNi及びSi濃度の増加が観察された。これら合金元素の濃度変化は照射により誘起された拡散,偏析過程により生じたものと考えられる。本研究の結果と、溶接によりき裂付近に発生していたと考えられる引張残留応力及び炉水中の溶存酸素濃度等を考慮すると、このき裂は応力腐食割れ(SCC)であると結論される。
三島 嘉一郎*; 齋藤 泰司*
JAERI-Tech 2002-014, 83 Pages, 2002/03
シビアアクシデント時の溶融燃料プールと冷却水との液液界面における熱伝達の把握を目的として、溶融ウッズメタルと蒸留水とを用いた定常及び非定常熱伝達実験を行った。定常実験では、自然対流領域から膜沸騰領域に至る沸騰曲線を取得するとともに、沸騰挙動を高速度ビデオにより観察した。非定常実験では、高温の溶融金属上に蒸留水を注入し、冷却過程における沸騰曲線を得た。得られた沸騰曲線を、固液系及び液液系に対する既存の相関式や実験データと比較し、以下の結論を得た。(1)界面の揺動が無視でき、かつ、界面に酸化膜に形成される場合には、液液系の沸騰曲線は、固液系の核沸騰及び膜沸騰領域の熱伝達相関式並びに限界熱流束相関式により概ね予測できる。(2)液液界面に酸化物が存在しない場合には、Novakovicらの水銀を用いた実験結果と同様、液液系の沸騰熱伝達は固液系の沸騰曲線により高過熱度側に移行する。(3)非定常状態における膜沸騰において、熱伝達率は、固液系の膜沸騰に対する推算値より約100%程度大きい値を示した。これは、界面全体の激しい揺動のために、みかけの熱伝達率が増大したものと考えられる。
飯田 健*; 富岡 雄一*; 吉本 公博*; 緑川 正彦*; 塚田 裕之*; 折原 操*; 土方 泰斗*; 矢口 裕之*; 吉川 正人; 伊藤 久義; et al.
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1, 41(2A), p.800 - 804, 2002/02
被引用回数:15 パーセンタイル:52.26(Physics, Applied)SiCは高周波、高パワー,高温,放射線照射下等、過酷な環境下で動作する素子用材料として優れた物性を持つ。また熱酸化で表面にSiO層が形成されMOS構造が作製できるが、酸化層/SiC界面には欠陥が多いため、物性値から期待される性能が得られない。そこで本研究では、分光エリプソメーター(SE)を用いて、その界面欠陥の発生原因を光学的に追究した。試料には、SiC基板を乾燥酸化して得た60nm程度の酸化膜を用いた。これをHF溶液を用いて斜めにエッチングし、酸化膜の光学的周波数分散特性を、膜厚をパラメータとして測定した。得られた値は、セルマイヤーの式を用いたカーブフィッティング法により、屈折率に変換した。その結果、SiC上の酸化層の見かけの屈折率は、Si酸化膜より小さくなった。また、屈折率は酸化膜厚の減少と共にも小さくなり、膜厚が1nm程度では1にまで近づいた。この屈折率の膜厚依存性は、酸化層がSiO層と高屈折率界面層から成ると仮定することで説明できる。このことから、酸化層/SiC界面には屈折率の高い界面中間層が存在し、それらが界面欠陥を発生させていると推定された。
亀尾 裕; 中島 幹雄; 平林 孝圀*
Nuclear Technology, 137(2), p.139 - 146, 2002/02
被引用回数:7 パーセンタイル:44.29(Nuclear Science & Technology)放射性核種で汚染された金属廃棄物の除染にレーザーアブレーション法を適用するため、照射雰囲気が鋼材表面に生成した酸化皮膜層のアブレーションに与える影響について検討した。レーザー光の吸収過程がLambert-Beer則に従うとの仮定の基づき、He、O、Kr、SF雰囲気中において、FeO 焼結体、ステンレス及び炭素鋼の吸収長及びアブレーションしきい値を測定した。その結果、高温水中でステンレス及び炭素鋼表面に生成した酸化皮膜層の選択的な除去には、SF雰囲気が最も効果的であることがわかった。またレーザー照射後の模擬金属廃棄物に対して二次イオン質量分析及びSEM観察を行ったところ、酸化皮膜層が完全に除去されている様子が観察された。
八巻 徹也; 浅井 圭介*
Langmuir, 17(9), p.2564 - 2567, 2001/05
被引用回数:41 パーセンタイル:92.2(Chemistry, Multidisciplinary)TiOナノシートと有機分子から成る新規なハイブリッド多層膜をラングミュア-ブロジェット法によって作製することに成功した。層状チタン酸化合物HTi□O・HO (x0.7; □, 空孔)を剥離ゾル化した溶液上に臭化ジオクタデシルジメチルアンモニウム(DODAB)のクロロホルム溶液を展開すると、安定な単分子膜が形成された。DODAB分子とTiOナノシートが形成したハイブリッド単分子膜は、疎水化した石英ガラス基板上に定量的に累積された。X線回折測定によると、この試料は繰り返し単位3.4 nmでアンモニウム分子とTiOが交互積層した多層膜であった。
鈴木 元衛
JAERI-M 82-015, 21 Pages, 1982/03
加圧水型軽水炉の冷却材喪失事故における燃料被覆管の、えの温度および内圧が過度変化する条件下での変形挙動に関する基礎的見通しを得るために、ジルカロイ-4管の破裂試験を大気中および99.97%アルゴンガス雰囲気中で行った。管は直接通電加熱によって様々な温度まで加熱保持され、破裂するまで緩慢に加圧された。破裂円周方向歪は概して大気中よりアルゴン中の方が大きいが、両雰囲気とも1/20K付近で最大となった。大気中でテストした管の中には、軸方向に拡大した長いふくれ変形を生じたものがあり、これは歪速度に対する冷却の効果、超塑性、形状的塑性不安定、表面酸化皮膜によって生じた応力のいづれの性質や考えによっても説明され得ないことがわかった。この変形の原因は、材料組織の異方性にあるかもしれない。しかし、この性質に立脚した定性的分析すら、データ不足のため不可能である。
柳原 敏; 塩沢 周策; 斎藤 伸三
Journal of Nuclear Science and Technology, 19(6), p.469 - 481, 1982/00
反応度事故条件下における燃料挙動の解明がNSRRにおいて進められている。実験の結果、UOペレットの偏心のために、被覆管温度が円周方向において異なっていることが判明した。この温度差は180°方向に取り付けた2本の熱電対による測定結果では、必ずしも最大の温度差を表してはいないが、測定可能な範囲内で最大150Cであった。他方、照射実験後、酸化膜厚さから温度差を推定した結果では、290cal/g・UOまでの発熱量条件において最大350Cであった。又、簡単な計算により、最大限UOペレットが偏心した燃料棒において被覆管の円周方向の温度差を評価すると、260cal/g・UOの発熱量において最大350Cの温度差が出来ることが分った。このUOペレット偏心の影響は、反形、溶融等にも現れており、UOペレットの偏心が燃料棒の破損にも影響を及ぼしている。
古田 照夫; 上塚 寛; 川崎 了; 橋本 政男; 大友 隆
JAERI-M 9475, 22 Pages, 1981/05
破裂した被覆管の内側表面における酸化膜の拡がりは、軽水炉の冷却材喪失事故中のヒートアップ計算にとって非常に重要な項目の一つである。酸化膜の拡がりを調べるため、900-1150Cにわたる酸化温度、35-240秒の酸化時間、2-1530g/m・sの水蒸気流速そして、約5-26mmの破裂長さなどの条件で模擬燃料棒の破裂・酸化試験を行った。内側表面での酸化膜の拡がりは、酸化温度、時間そして供給される水蒸気量によって影響を受ける。特に、破裂の長さが大きくなると、酸化膜の拡がりは大きくなっていく。破裂部付近での酸化膜厚は他の部分よりも厚く、膜厚の反応速度式によって与えられる値よりも大きい。